CogEvoを科学する

認知機能評価の医療での活用は、認知症の早期発見だけではない

 認知機能評価は主にMCIや認知症の早期発見のためのスクリーニングとして活用されています。しかし認知機能の低下自体は、認知症だけでなく神経変性疾患、脳梗塞や脳出血、甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症、脱水などが原因で起きることや、統合失調症やうつ病といった精神疾患でもみられることがあります。 また、疾患の治療に起因するものとして、がんの化学療法による認知機能障害(ケモブレイン)等が報告されています。 詳しくは、バックナンバー「認知機能低下の原因は認知症だけではない」参照

最近では、原因の90%が喫煙と言われている慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、認知機能障害を伴うケースが多いことが報告されています。これは、低酸素血症や非活動性の生活スタイルが認知機能に影響すると考えられています。COPDは症状を悪化させないために、患者さん自身の自己管理が重要となりますが、認知機能低下によって医療者の説明が理解できなかったり、自己管理能力も低下するため、早い段階から認知機能評価を行う必要があると言われています。

近年の研究で、慢性歯周病の原因である口腔細菌がアルツハイマー型認知症患者の脳内から検出されたり、それに関連した原因物質であるアミロイドβの産生・蓄積により認知機能障害を引き起こす等、アルツハイマー型認知症と歯周病の関係について報告されています。このように歯周病の悪化が認知症リスクを高める可能性があることから、認知機能のチェックをしながら治療の継続を促すことに取り組んでいる歯科もあります。

その他にも、前述のCOPD治療に用いる吸入薬や、正確に目に入れる必要がある点眼薬など、自己管理が難しい投薬については認知機能低下が服薬状況に影響しやすいため、早めに認知機能をチェックし、適切な服薬指導を行っている薬局もあります。

このように、認知機能評価は単にMCIや認知症の診断ではなく、高齢期における様々な病気の治療や悪化防止のために、多くの診療科で活用されることが期待されています。

(認知機能の見える化研究所)